Amazonのベストセラー、いわゆるランキングの上位100位あたりを日々定点観察しているのだが、定番といえば、男女のアイドル系の写真集、ダイエット本、お金もうけ本などである。
これらの定番ラインナップからわかるとおり、ここには凡夫の煩悩がありありと現れる。ベストセラーは凡夫の鏡であり、そこには人々の「物足りようの思い」「こうしたい」「ああなりたい」がタイトルと書影から見え隠れしているようだ。
当然そこでは「健康」もテーマになる。
最近のベストセラーを見ていると「老いない生き方」「癌にならない生き方」などが上位にラインアップされていた。
本当は「老いて、癌になる」つまり「死ぬことを大前提においた生き方」こそ大事なのだが、まったく求める方向が逆だ。
こうした本のタイトルに惹かれるような生存ボケした人々にとっては、ぜいぜい「健康と金」だけが幸福の定義である。
しかしながら「健康と金」だけをご本尊様にして、それを絶対価値としていれば、人生の最期には奈落の底に落ちていくような思いで死んでいかなければならないだろう。
「人生はニャンとかなる」なんてベストセラーもあった。
しかし、「人生はニャンとかなる」ときもあれば「人生はオインク・オインク(老いと苦しみ)」に満ち満ちたものでもある。何事もなしあたうのが神様であり、むしろ「ニャンともならない人生」「思い通りに行かない人生」が当然あって、「それでも、ぐずらずに生きる姿勢」こそ大切なのではないか。
損得や逃げ道ばかり探していては、いつになっても苦しいままだ。
「死」を見つめない生き方は、本当の生き方ではない。